全国的な傾向だが、埼玉県内で桜や梅、桃などの樹木を枯らす特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」の被害が急速に拡大している。被害が進んだ樹木は枯死し、倒木などの被害も出ている。
県が2026年6月8日に公表した最新の調査結果によると、被害が確認されたのは県内63市町村のうち56市町村に上り、約89%の市町村にまで広がっている。被害確認箇所も1,391か所で、前年度の931か所から約49%増加した。調査を開始した2018年度の128か所と比較すると、約11倍に拡大し、桜並木や公園の樹木だけでなく、農業への被害も懸念されている。
埼玉県は、このような状況から今年6月の県議会定例会で、「クビアカツヤカミキリ」の緊急防除対策に関する補正予算を計上し、このうち、市町村への補助金として5億9,500万円を確保した。
この補助金は、当初予算で設けられていた補助率は当初と同じ2分の1ではあるが、これまでの補助上限を撤廃し、今後の市町村による積極的な防除を促すためのものだった。
しかしながら、10月9日の「環境農林委員会」において、この補助金の活用状況について所管事務を行った結果、驚くことにほとんどが市町村に使われることなく執行されていなかったことが明らかになった。
県の答弁によると、5億9,500万円の補正予算に対し、現時点で市町村への補助金として見込まれている金額は、わずか1億4,000万円。予算額に対する執行割合は23.5%だった。
積極的に行うべき「クビアカツヤカミキリ」対策として確保した補助予算の約4分の3が、現時点では活用される見込みがなかった。
一方、補助金の活用に手を挙げた市町村は、県内63市町村のうち37市町村で、全体の約58.7%である。半数以上の市町村が補助制度の利用を希望しているにもかかわらず、補助金の総額は予算の4分の1にも達していないことから、補助金が市町村にとって利用しにくいものであったことが分かる。
補助の上限がなくなったとはいえ、手を挙げた市町村が年度途中に予算を半額工面するのは、予算編成上も困難だったと言える。
県は、この状況に鑑み、今後は補助金を積極的に活用して、「クビアカツヤカミキリ」対策を市町村が積極的に行うよう、今後、市町村のヒアリングを行い来年度の補助金設計を検討すると答弁した。
<ちょい一言>
県が「クビアカツヤカミキリ」対策の事業費の半分を補助するといっても、残りの半分は市町村自身が負担しなければならない。
例えば、1,000万円の防除事業を実施する場合、県からの補助金は500万円で、市町村も500万円を負担する必要がある。
今年の7月に県が呼びかけたが、市町村にとっては、すでに年度当初の予算に基づいて色々な事業を進めている中で、半額を用意して、事業を追加するのは困難だろう。
被害の拡大を防ぐ必要性を認識していても、財政的な負担が大きければ、思い切った防除事業に踏み出すことは難しい。
「交付税措置もある。」「市町村の施設、域内のことなので、半額負担がは当たり前」という感覚が県にあるならば、それは反省すべきだ。「クビアカツヤカミキリ」は移動する。正に広域的に防除などの対策を行う必要があり、県が責任をもって果たすべき役割だ。
上限を撤廃したからと言って、市町村に半額を負担させるやり方は、予算に余裕がある市町村とそうではない市町村で、対策に差を生じさせることにもなる。
ある市町村は対策を進められても、隣接する市町村で対策が進まなければ、再び被害が広がる可能性もある。
県は今後、補助率をはじめ様々な点を見直し広域的に本気で「クビアカツヤカミキリ」に取り組まなければ、県内の桜、桃、梅などはいずれ全滅してしまうだろう。危機意識をもって取り組んでほしい。
