久喜市の不明高齢者 120歳以上で63人 

 

久喜市の不明高齢者 120歳以上で63人
 久喜市市民課によると、久喜市で戸籍上は存在するが実際には存在しない高齢者で120歳以上が、先週末時点で63人いることが分かった。

63人の内訳は、旧久喜市で46人、旧栗橋町で17人。男女比は35:28人だった。戸籍上の最高齢は152歳だった。

久喜市では、全国的に戸籍上は存在している存否不明の高齢者が多数いるという報道を受け、調査をしたという。
市役所のシステムでは、戸籍上の100歳以上は簡単に判明するが、実際に当人の存在・所在を調べるのは家族や親族などの聞き取りなどの協力が必要で難しいという。こうしたことから、久喜市では戸籍上120歳以上の市民に絞り、実際の存否を確認したところ不明や既に死亡していたという。

(ちょい一言)

今回は、”戸籍上”の年齢について調査した結果である。正確性を期待される行政事務という意味からは、120歳以上に係らず戸籍上の不実記載がないように努めることは当然である。ただ、戸籍という基本的に本人や家族などの届出による行政事務であることを考えると、戸籍の内容の正誤を判断するのは、難しい。特に戦中・戦後の混乱期では、届ける側の市民にもそれを受ける側の行政でも、なかなか規定どおりの戸籍事務の運用は難しかったのだと思う。
しかし、全国的に戸籍年齢に不実記載の可能性が高い現状を考えると、ほうっておくことは許されず、先ずは、住民基本台帳上の高齢者の戸籍上の存否の照会からはじめるべきだろう。次に、例えば人間の平均的な寿命から推測して、住民基本台帳上の100歳前後から段階的に年齢を下げて存否の実態を調査することも必要だろう。

今回、久喜市は戸籍上の年齢や存否不明などの120歳以上について公表した。
しかし、問題の本質は”戸籍上”のことではなく、各種行政サービスの受け取りや申請する際に連動している”住民基本台帳上”の本人の存否である。
戸籍は、住民サービスを受けたり、申請する際の各種オンラインとは接続されていないが、住民基本台帳は連動している。その情報は信頼され、行政サービスを受けることが可能であり、権利の主張ができる。
よく”市内最高齢の方”や”100歳以上が何人いるか”という情報は、この住民基本台帳などからの情報である。

東京都内で発覚した既に死亡していた方の例が問題となったのは、戸籍上ということでなく住民基本台帳上も存在していて、年金の受給をはじめ各種行政サービスの客体となっていたからである。もちろん、その逆に存在していたものとして納税などの義務も負っていたことにはなるが、かなりの高齢であることや就業の実態が把握できないことを考えると、比較的にサービスの客体としての割合が高かったことが推測される。
こんなことが頻発すれば、結果的に自治体財政に影響を与えることは必至である。実際には、結果的に生存していない方の年金や各種サービスをその家族などに支給することになるからである。

また、住民基本台帳上の存否に不実があれば、災害時など非常時に係る高齢者の所在確認という行政の危機管理上の問題もある。

久喜市では、戸籍上の存否の不実はあったが、住民基本台帳上のものではなく不正受給などの可能性はないという。しかし、住民登録など、住民基本台帳に係るものは本人や家族などの基本的に届出によるところから、行政では届出の正誤やその後の状況変化を把握するのは難しい。

今でも、民生委員をはじめ公的な方々ができるだけ、ご近所や地域の実情把握に努めている。しかし、生活スタイルや価値観の多様化から、なかなかこれが進みにくいとも言われている。 こうした時に、頼りになるのは近隣や地域、各団体など人と人が自主的に係る様々なコミュニティであり、係る人の存否ぐらいはだいたい把握していると思われる。行政がこうしたところと信頼関係で結ばれ、個人情報を配慮しつつその壁を越えて、協力するのも一つの方法かも知れない。

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