自民党県議団提案「県民栄誉賞」に議会の事前同意 疑問残る条例が成立 

 2月定例会最終日の平成30年3月27日、自民党県議団の提案である「埼玉県民栄誉賞等について議会の議決事件と定める条例」が自民党県議団と改革の2つの会派だけの賛成で可決した。

 これにより、「県民栄誉賞」、「彩の国特別栄誉賞」、「彩の国功労賞」(以降「県民栄誉賞等」と表記)を表彰する際には、事前に議会の議決(同意)を得ることとなった。
 同条例は、自民党県議団がラグビーワールドカップ2019や東京オリンピック・パラリンピックで本県でも表彰対象選手が予想され、県民の栄誉に関する最高の表彰であることから、あり方を見直したという。
 また、「名誉県民」制度がない埼玉県では、「県民栄誉賞」がこれに値するものであり、県民の総意とすることから議会の事前の議決を要することにしたという。
 しかしながら、これまで埼玉県では県民栄誉賞等については根拠などを規則や要綱で定め、受章者の都合も勘案して表彰の対象になる事柄が発生してから、県庁内部で検討し半月から2ヶ月程度で知事が表彰を行っていた。
 多くの他県や市町の制度と同様に、表彰の対象になる事柄が発生してからできるだけ早く、時宜を捉えた表彰を行うことで住民と共にその栄誉を讃え、喜びを共有するという意味がある。
 今後は、表彰する度に事前の議会の議決が必要になることから、議会が開かれるタイミングでしか表彰をすることができない。

 昨年は、夏の甲子園で優勝した花咲徳栄高校、日本人初の100mで9秒台を記録した桐生選手が「彩の国功労賞」を受賞している。いずれも表彰の対象となる事柄が発生してから数週間後の受賞だ。

 全国では東京都をはじめ、19の都県で「県民栄誉賞」を条例で定めているが、同県議団がこれに”値する”としている県民栄誉賞などは他の制度として埼玉県と同様に議会の議決を要しないで並存している。

 同条例案を審査した県議会総務県民生活委員会では、「表彰時期が遅くなるので、議決事件にはなじまない。」「(これまで)特段問題はない。あえて条例制定(事前に議会の議決を要する条例に)する必要はない。」「県民の盛り上がり時期に表彰することも重要。他県出身で、本県在住の人が他県に表彰されて本県が時間がかかるのは、埼玉県のイメージダウンになる。」など反対意見が相次いでいた。

(ちょい一言)
 私は議会最終日の討論でも指摘したが、そもそも説明者が言う「県民栄誉賞の制度がないため」「県民栄誉賞等は、名誉県民の表彰に値すると認識している。」というのであれば、「名誉県民」の制度を条例で定めるべきと考えている。
 まったっく違う「名誉県民」と「県民栄誉賞等」の制度を混同し、これまでの制度に単に”事前に議会の同意が必要”であると「議会の議決事件に定める条例」で定めるのには無理がある。
 今回の同条例では、あくまで議会の議決事件に定める条例であるので、県民栄誉賞や特別功労賞等の意義等も同条例の文中カッコ書きで表記されているに過ぎない。
 表彰の目的や議会で事前に議決をすること以外、手続きについても定められていない。

 これで「名誉県民」と同じと言えるのだろうか。他県・市の「名誉県民」を定める条例の内容と埼玉県のこれまでの「県民栄誉賞等」は主旨を始め内容がまったく違う。
 現に19の都・県は「名誉県民条例」の他に、「県民(都民)栄誉賞」を表彰しており、当然、事前に議会の議決が必要と定めている所もない。

 今回の無理な条例化で、議会が開かれるタイミングでしか、表彰ができなくなったことから、これまでの県からの表彰制度が時宜を捉えたものでなくなることが大いに心配される。

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